【徹底解説】PoWやPoSってなに?ブロックチェーンを支えるコンセンサスアルゴリズム

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ブロックチェーンは、分散型ネットワーク内で信頼を確立するための技術です。複数のノード(参加者)が取引データを共有する際、一貫したデータの正確性を保証する仕組みが必要です。これを実現するために使用されるのがコンセンサスアルゴリズムです。本記事では、主要なコンセンサスアルゴリズムの仕組み、特徴、利点、欠点について詳しく解説します。

目次

PoW(Proof of Work)の仕組み

PoW(プルーフ・オブ・ワーク)は、大量の計算をして問題を解くゲームのような仕組みです。この計算は、世界中のコンピュータを使って「マイナー」と呼ばれる人たちが行っています。

例えば、みんなで一斉に難しいパズルを解く競争をするイメージです。一番早く正解を見つけたコンピュータが次のページ(ブロック)を本のようなもの(ブロックチェーン)に書き加えることができます。この作業を「マイニング」と呼び、成功した人には報酬(仮想通貨)がもらえるようになっています。ビットコインの「マイニング報酬」は2024年4月20日に3.125 BTCになりました。ビットコインのマイニング報酬は4年に1度半減し、次回は2028年に半減が予定されています。

マイニングによって安全性が確保されるのは、全てのノード(ブロックチェーンネットワークに参加しているコンピュータ)が同じ計算結果を共有することで、不正があればすぐに発見される仕組みになっているためです。ノードはネットワーク上でデータを共有し、取引を検証したり、ブロックチェーンの一貫性を維持したりする役割を果たします。

例えば、誰かが過去のデータを書き換えようとすると、その変更が正しいかを確認するために、他の全てのノードがそのデータの整合性をチェックします。不正を行おうとする側は、全てのノードに認められるよう、過去の計算結果を上書きする膨大な再計算を行う必要があります。これには非常に多くの時間と資源が必要で、不正を実行することが現実的に難しくなっています。また、計算力が膨大なため、51%攻撃(ネットワーク全体の計算力の過半数を一つの勢力が支配する攻撃)が非常に困難です。こうして、みんなが同じ内容を信じられる安全な仕組みが作られています。

  • 分散型ネットワークの安全性が極めて高い。計算力の多いノードが不正を防止する役割を果たす。
  • 2009年にBitcoinで導入されて以来、長期間にわたり信頼性のある実績を持つ。
  • エネルギー消費が非常に大きい。特に大規模なマイニング施設では膨大な電力を必要とする。
  • トランザクションの処理速度が遅く、1秒あたりの処理量(TPS: Transactions Per Second)が限られているため、スケーラビリティの問題がある。

PoS(Proof of Stake)

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)は、ブロックを生成する権利を保有する仮想通貨の量(ステーク)に応じて決定する仕組みです。これにより、PoWのように大量の計算力を必要とせず、資産を持つ人がネットワークの維持に参加します。ブロックを作成するノード(バリデーター)は、ステークを担保として提供し、不正を行った場合はその資産が没収される仕組みが導入されています。

ステークを提供するバリデーターはランダムに選ばれることが多く、選ばれたバリデーターが新しいブロックを検証・追加します。これにより、エネルギー効率が高く、環境負荷が少ない運用が可能になります。

  • エネルギー消費が少ないため、環境に優しい
  • ネットワークがより分散化されやすい
  • バリデーターがステークを提供することで、不正を行うインセンティブが低下する
  • 大量の資産を持つノードに有利な設計で、資産集中が懸念される
  • PoWほど長期的な実績がなく、導入事例が比較的少ない
  • 選出プロセスや運用ルールが複雑になる場合がある

DPoS(Delegated Proof of Stake)

DPoS(デリゲイテッド・プルーフ・オブ・ステーク)は、ネットワーク内の参加者が投票を通じて代表者(デリゲート)を選出し、その代表者がブロック生成を行う仕組みです。各ノードは自分のステーク(保有する仮想通貨の量)に応じて投票権を持ち、この投票権を使って信頼できる代表者を選びます。

選出されたデリゲートは、順番にブロックを生成し、ネットワークの維持に貢献します。もしデリゲートが不正を行ったり、ネットワークに貢献しなかった場合、そのデリゲートは投票によって解任されることがあります。このプロセスにより、効率性とガバナンスが高められています。

  • トランザクションの処理速度が非常に速く、大量の取引が可能
  • エネルギー効率が高く、PoWに比べて環境負荷が低い
  • コミュニティがネットワーク運営に直接関与するため、参加者の信頼を得やすい
  • 一部の代表者に権限が集中しやすく、権力の偏りが発生する可能性
  • 完全な分散型とは言い難く、中央集権的な要素が強まる場合がある
  • 投票システムが複雑で、富を持つノードが影響力を持ちすぎるリスク

PoA(Proof of Authority)

PoA(プルーフ・オブ・オーソリティ)は、信頼できるノードが事前に認定され、そのノードがブロックを生成する仕組みです。この認定は通常、中央機関や既存のネットワーク参加者によって行われます。選ばれたノード(バリデーター)は、ネットワークの信頼性と効率性を保つためにブロック生成を担当します。

この仕組みでは、計算力や資産量ではなく、ノードの「信頼性」が重視されます。例えば、企業や政府が運営するネットワークでは、特定の組織や個人を信頼できる主体として認定し、その主体がネットワークの運営を行うことが一般的です。これにより、高速で安定したブロック生成が可能になります。

  • 高速なブロック生成が可能で、商用利用にも適している。
  • PoWのように膨大な計算力を必要とせず、環境負荷が低い。
  • 少数の信頼できるノードがブロック生成を行うため、運用が効率的。
  • ノードの認定を行う主体が限られるため、完全な分散型ネットワークではない。
  • 認定されたノードが不正を行う可能性があり、その場合の対処が課題。
  • 大規模なネットワークでは認定プロセスが複雑化する可能性がある。

PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)

PBFT(プラクティカル・ビザンチン・フォールト・トレランス)は、ノード間での合意形成を通じてトランザクションを処理する仕組みです。このアルゴリズムは、あらかじめ定義された「プライマリーノード」(リーダー)と「バックアップノード」(フォロワー)が協力して動作します。プライマリーノードがトランザクションを提案し、バックアップノードがそれを検証します。合意を得るためには、ネットワーク内の3分の2以上のノードが提案を承認する必要があります。

この仕組みでは、悪意のあるノードがネットワーク内に存在しても、全体の3分の1以下であれば正常に動作します。このような状況は「ビザンチン障害」と呼ばれます。ビザンチン障害とは、一部のノードが意図的または偶発的に誤った情報を送信することを指します。この問題が発生しても、PBFTでは3分の2以上のノードの合意が得られる限り、正しい取引が承認されます。不正を働いたノードは合意プロセスから除外されるため、安全性が高い設計となっています。

  • 合意形成が効率的で、トランザクションが即座に最終確定するため、金融やサプライチェーン分野での利用に適している。
  • ビザンチン障害に強く、不正がネットワーク全体に影響を与える可能性が低い。
  • PoWのような計算力競争が不要で、環境負荷が少ない。
  • ネットワーク規模が大きくなるにつれて、合意形成にかかる通信量が増加し、処理が遅くなる。
  • プライマリーノードやバックアップノードの設定が必要で、運用開始までの準備が煩雑。
  • 許可型ネットワークで使用されることが多く、完全な分散型ネットワークには適さない場合がある。

ブロックチェーンのトリレンマ

ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムを議論する際に避けられないのが「トリレンマ」の問題です。このトリレンマは、分散性」「セキュリティ」「スケーラビリティ」の3つの性質を同時に完全に満たすことが困難であることを指します。

アルゴリズム分散性セキュリティスケーラビリティ
PoW
PoS
DPoS
PoA
PBFT

まとめ

コンセンサスアルゴリズムは、ブロックチェーンの運用において非常に重要な要素です。それぞれのアルゴリズムには利点と欠点があり、用途に応じて最適な選択が求められます。例えば、エネルギー効率を重視する場合はPoSやDPoS、セキュリティを重視する場合はPoWが適しています。

これからのブロックチェーン技術の進化に伴い、より効率的で安全なコンセンサスアルゴリズムの開発が期待されています。

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